ファミリーキャンパー物語 vol.1 『雨女』
出展:写真AC
広島県西部のとある団地の一軒家。そこに貧乏ながらも楽しく生活する家族がいました。
稼ぎは少ないが、キャンプギアへの物欲は人一倍の夫マサ。この物語の主人公である。
そして、そんなマサを影ながら、口撃と打撃で支える妻マサコ。
マサコの遺伝子をこれでもかと受け継いだ口撃と習っている格闘技の打撃で、マサを同列と見なしている小学校6年生の娘マサヨ。
そんな家族の物語。
今回はマサ家族が、4か月ぶりの1泊キャンプに行くことが決まってから当日までのお話。
久しぶりの泊まりのキャンプが決定してから、マサは指折り数えて当日を待った。キャンプ場候補地も2転、3転したがようやく決まった。
出展:写真AC
今回は夏ということで海辺のキャンプ場を選択。海で泳ぐことを目的としたキャンプ。海へ泳ぎに行ったのは、まだマサヨが保育園の年長か小学校1年生以来だろうか。それ以降はもっぱら、泳ぐと言えばプールであった。
久しぶりの海水浴ということで、いつもはキャンプと言えば、マサ1人が前のめりなのだが、今回はマサコもマサヨもかなり乗り気だ。
マサコ「私とマサヨのラッシュガード買ってもいい?裸足じゃ危ないし、マリンシューズも買っていい?マサも買ったら?」
どうせ、ダメだと言っても買うんだろ。キャンプギアへの決済には厳しいくせに、景気の良い話だと思いながらマサは、
「おう、いいじゃん、いいじゃん。買いんさいや。」と答える。
キャンプに気持ち良く行ってもらえるなら何でもいいとマサは思った。
そして、キャンプ当日が迫ってくる。キャンプ予定は7月の下旬。2週間前からスマホで天気予報をチェックするマサ。
現在は梅雨真っ只中だが、さすがに2週間後は梅雨も明ける予想で晴れマーク!
「さすがにね、今回は大丈夫じゃろう。」マサは心の中で安堵の声をもらす。
マサが安堵するのも無理はない。この家族、キャンプを始めて1年、泊まりのファミリーキャンプは5回。そのうち雨が全く降らなかったのは1度だけ。8割の確率で雨にあっている。その中には全く雨の可能性がないのに降ったこともあるのだ。
さらに1週間前へ。日課というか、1日のうちに2回も3回も予報をチェックするマサ。
「あれ?なんか少しずつ雨がずれ込んできとる。曇りの時間帯が多いなあ。まあさすがに大丈夫じゃろう。」と思いながらも、一抹の不安を感じるマサ。
そんなマサの不安など露知らず、能天気なマサコはマサヨに
「水着着て、ラッシュガードも着てみようや」と、浮かれて水着ファッションショーを始める始末。
まあ、楽しみにしてくれてるのは良いことだと思うマサ。
そして、3日前の夜。玄関先に出てタバコを吸いつつ、スマホで天気をチェック。
「雨だ・・・。」全般的に曇り予報だが、大した降水量ではないが雨が降る時間帯も。
もはや、泳ぐのは厳しくなってきたが、なんとかキャンプに行きたいと願うマサ。泳げないなんて分かったら、きっとマサコもマサヨもキャンプに行かないと言い出すはずだ。
出展:イラストAC
そこに、どこからともなく高木○ー風なカミナリ様が降臨!
カミナリ様「おたく、雨男だな。」
マサ「えっ?そうなんすか。」
カ「それに、あんたの嫁さん、ありゃあ、あんたに輪をかけて、とんでもねえ雨女。張り切れば、張り切るだけ雨が降る。」
マ「ちなみに娘はどうですか?」
カ「娘?あ~、弱めの晴れ女ね。」
マ「雨、なんとかなりませんかね?」
カ「ムリ。嫁、張り切りすぎ。」
マ「・・・。」
帰って行くカミナリ様。
ついに前日。泳ぐどころか、キャンプすることすら躊躇する雨予報。
マサは苦渋の決断。「ファミキャンは無理だな。」
それにしても、先日のカミナリ様とのやりとりをマサコに話したい。いつもいつも雨が降るのはお前のせいだと。
今回も水着ファッションショーなんて開催するからこんなことに・・・。
でも、言えないな。二度とキャンプに行かないと反撃を食らうだけ。
雨空を憎々しく見上げるマサであった。
※今回の物語は大いに脚色をされたノンフィクションです。作中に出ている人物は実在の人物とは関係あるような、ないような感じです。
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