ファミリーキャンパー物語 vol.3 『熊よけ』
次回のキャンプが決まったマサ家。
4か月ぶりのキャンプということで、喜びを隠しきれないマサ。
出展:写真AC
しかしながら、最近は登山やキャンプで『クマ』に出くわす事件を見かける。キャンパーの端くれとして、一応、心の片隅にとどめておかねばいけないなと思うマサ。
キャンプブログでも最近いろんな人が『クマ』について書いてるもんな、少し勉強しておくか。
ふむふむ、クマよけって鈴だけじゃないんだな。わが家も万が一に備えて何か準備が必要だと思いつつも、他に欲しいものあるしなあと思うマサ。
そうこうしているうちに、キャンプの日は迫ってくる。そんなある日の夜。
「クマに人が襲われとったね。」とマサコがタイムリーな話題を提供してくる。
まさかキャンプやめようやとか言い出すんじゃないじゃろうね。と、心配になるマサ。
せっかく掴んだ久々のキャンプ。逃してなるものか。
マサ「う、うん。そうじゃね。関東のほうじゃったかいね。」
出来るだけ遠い場所で起こった出来事だと、強調してみる。
マサコ「この辺でもけっこう目撃情報あるじゃん。」
広島県西部の山あいの団地に住むマサ家の近くでも、たびたび『クマ』の目撃情報がメールで知らされているのである。
ヤバいよ、ヤバいよ、絶対やめようっていいだしそう。と、ますます心配になるマサ。
すると、
マサコ「うちに金属バットってあったっけ?」
マサ「えっ?あるよ。倉庫に眠っとる。」
マサは30代後半まで草野球をしていた過去があり、当時の誕生日プレゼントとして義理の兄夫婦から頂いた物だ。
今はひっそりと倉庫の片隅で、誰かに振られることを夢見て鎮座している。まさか、バットも『クマ』相手に振られるとは思ってもいるまい。
マサコ「次のキャンプはマサヨが学校に持って行っとる鈴と、そのバットを持って行っとこうや。」
マサ「クマよけなら、クマよけスプレーとかもあるみたいよ。ほらっ。」
マサコ「・・・バット持って行っとこうや。」
値段を見たのかどうかは分からないが、どうやら保留されたらしい。
ところで、『クマ』に遭遇したとして、いったい誰がそのバットで『クマ』に立ち向かうのだろうか?
(・・・俺だよね。)マサは心の中で呟いた。
(そりゃ、そうだよね。どう考えたって俺だよね。一応野球やってたし・・・。いや、違うでしょ!クマ相手にバットで勝てるの?)
マサの呟きは止まらない。
(あの百獣の王、武井壮さんでさえ、クマ相手に勝つには8週間かかるって言ってるのよ?!)
(俺みたいな万年運動不足のおじさんがバットで勝てるのかね?無理でしょ?)
武井壮さんの話では、クマがヤバイのは防御力らしい。分厚い脂肪で覆われたあのボディーは殴ったところで大したダメージは与えられないらしい。
そうなると、残されたのは頭を思いっきり、バットで殴るほかない。
(たぶん、そんな至近距離まで寄る前にやられちゃうよね。マサコ、俺に死ねって言ってるようなもんだよ?)
長い思考の後、マサはマサコにこう言った。
「そうじゃね、一応持って行っとこうや。」
そうそう『クマ』と出くわすこともあるまい。自分の命よりキャンプに行くことを選択したマサ。
出展:写真AC
でも、近いうちにクマよけスプレーは買わないといけないなと思うマサであった。
※今回の物語はノンフィクションですが、動物愛護の観点から、私自身、クマを傷つけたいという思いはないということは、ご承知ください。